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Q&A
兼業禁止と懲戒解雇

質問

 私は,会社の休日に家業を手伝い,副収入を得ています。しかし,最近,これが会社の就業規則の兼業禁止規定にふれると聞きました。休日の時間のあるときに少し仕事を手伝っているだけなので,会社には迷惑をかけていないと思いますが,このようなことで解雇されることもありうるのでしょうか。


 就業時間外の余暇は,労働者が自由に利用できるものであることからすれば,就業時間外に別の仕事をすることも原則的には自由と考えられます。
  しかし,労働者が就業時間外に別の仕事をすることで疲労が蓄積したり,使用者の秘密やノウハウが漏洩するなど,労務提供に影響を与えることが十分考えられます。

  日通名古屋製鉄作業事件(名古屋地裁1991(平成3)年7月22日判決・労働判例608号)では,裁判所は,「労働者は,勤務時間外においては,本来使用者の支配を離れ自由なはずであるが,勤務時間外の事柄であっても,それが勤務時間中の労務の提供に影響を及ぼすものである限りにおいて,一定限度の規制を受けることはやむを得ないと考えられる。これをいわゆる兼業の禁止についてみるに,労働者が就業時間外において適度な休養をとることは誠実な労務の提供のための基礎的条件であり,また,兼業の内容によっては使用者の経営秩序を害することもありうるから,使用者として労働者の兼業につき関心を持つことは正当視されるべきであり,労働者の兼業を使用者の許可ないし承認にかからせることも一般的には許される」としています。

 就業規則に懲戒事由として「会社の承認を得ないで在籍のまま他に雇い入れられたとき」などという規定を設けている場合があります。

  懲戒解雇を有効とした裁判例として,前述の日通名古屋製鉄作業事件があります。この事件では,大型特殊自動車の運転手として採用され,交代勤務に就いていたものが,タクシー運転手として公休日に勤務していたことが,就業規則の「社命または許可なく他に就職したとき」にあたるとして懲戒解雇をうけたものです。裁判所は,「その勤務時間は,場合によっては被告会社の就業時間と重複するおそれもあり,時に深夜にも及ぶもので,たとえアルバイトであったとしても,余暇利用のそれとは異なり,被告への誠実な労務の提供に支障を来す蓋然性は極めて高いといわなければならない」とし,就業規則の禁止する兼業に該当するとし,解雇を有効としています。この事件では,兼業の実態が「会社を退社すると,その足でタクシー会社に赴き,午後5時から翌朝まで乗務し,午前8時半から同11時までの間に当日の売り上げを納入し,さらに,公休が続くときは,次の日の朝方まで乗務し,納車した後は新日鉄正門前に自家用自動車を停め,そこで仮眠してから当日の勤務に就くという体制をとっていた」というもので,かなり無理のあるものだったため,会社に対する労務の提供に影響があると判断されたものと思われます。

  一方,解雇を無効とした裁判例として,国際タクシー事件(福岡地裁1984(昭和59)年1月20日判決・労働判例429号)があります。
  この事件は,タクシー運転手として勤務しながら,父親の経営する新聞販売店の業務に従事したことが,兼業禁止規定にふれ,懲戒解雇を受けたものです。裁判所は,「右兼業禁止規定に違反するのは,会社の企業秩序を乱し,会社に対する労務の提供に格別の支障を来す程度のものであることを要する」とした上,@まず一部の期間については,兼業の動機は経営者である高齢の父親の懇請によりやむを得ず引き受けたものであること,所定終業時刻より前の約2時間で,月収も6万円と比較的低額であったことから,会社に対する労務の提供に格別の支障を来す程度のものとは認められないとし,A次に新聞販売業務が勤務時間内に行われ,月収15万円を得ていた期間については,会社秩序に影響を及ぼし,労務の提供に格別の支障を来す程度のもので,兼職禁止規定に該当するとしました。しかし,結論としては,使用者は労働者の行動を把握しており,本人に確認すれば容易に是正が可能であったこと,労働者はAの期間中タクシー乗務に熱心で,業務成績を上げていたこと,他にも兼業している従業員が多数認められること,懲戒解雇通知の当時は新聞配達業務を辞めていたこと,懲戒解雇を受けるといわゆるブラックリストに掲載され,同業者への再就職がきわめて困難であることから,労働者の受ける不利益があまりに大きいとして,解雇権の濫用にあたるとしています。


(弁護士 根英樹)

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