「契約社員」
質問
私は障害をもって働いています。1996年4月1日にA家具メーカーに入社しました。契約は「1年契約」と言われ、契約期間は4月1日から翌年の3月31日までとなっていました。その後、3回同じような1年契約を結び直しました。ところが、4回目の契約期限が終わる2ヶ月前に、会社から「不景気なので、契約は今回で終わりにしたい。」と言われました。
この会社では、障害者のほとんど全員が1年契約で“契約社員”といって、“正社員”と区別しています。契約社員の契約期間が来れば、やめなければいけないのでしょうか?
答え
言われるままに会社をやめることはありません。自分から「再契約はしない」と言わないでください。
会社の一方的な都合
労働契約では、通常は「いつからいつまで働く」と言うような期限を定めていません。
あなたが1年契約となったのは会社の一方的な都合です。
会社は「契約社員」にしておけば、
(1)1年ごとに契約を打ち切れること
(2)退職金の負担をほとんどしなくてよいこと
などを計算したものと思います。
法の下の平等
会社は、障害者についてほとんど契約社員にしているとのことですが、これは憲法の定める“法の下の平等”の趣旨に反するものです。
日本には日本国憲法と言うすばらしい憲法があって、国民の基本的人権を守っています。
憲法第14条では
「すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において差別されない」
と定めています。
“社会的身分”とは「人が社会的に占める地位または身分で、本人の意思ではのがれることができないもの」と言うことです。
●“障害者”と言う理由の差別は「社会的身分による差別」であり、憲法の趣旨に反するものです。
差別的取あつかいの禁止
憲法の規定をうけて、
労働基準法
では
「使用者は、労働者の国籍、信条または社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的な取り扱いをしてはならない」
と定めています。
●【質問】のA家具メーカーの扱いは、障害者という社会的身分を理由とした差別的取扱いに該当します。
会社側の反論
このことについてA家具メーカーは
(1)“法の下の平等や差別的取扱いの禁止”とはいっても、
「合理的な理由にもとづく不利益取扱い」
は許される。
(2)
「契約自由の原則」
があり、労働者も納得の上で採用したのだから、とやかく言われる筋合いはないと、反論すると思います。
これまでこのような論理が通ってきたことも事実です。
平等ではない関係での契約
「契約自由の原則」は、契約する者がお互いに対等な関係にあることを前提としています。
入社するときのA家具メーカーとあなたの関係は決して対等ではありません。
特に障害者と言う立場を考えますと、会社は「雇ってやってるんだ」という強い立場にあります。1年契約といっても、あなたの側でも希望して1年契約を承知したのではない筈です。
●このような背景の下での契約は、「契約の自由の原則」は制限を受けますし、障害者だけを契約社員とするのは、会社側が「許される」と主張する「合理的な理由にもとづく不利益取扱い」とは言えません。
契約打ち切りの制限
(1)判例(裁判所の考え方)
「1年契約を何度も結び直して更新を重ねたときは、契約上は“1年契約”になっていても、“期限を定めていない契約”と同じ扱いになり、契約を打ち切るには、通常の労働契約で労働者を解雇する理由と同じような正当な理由が必要である」
というのが判例です。
(2)“不景気であれば会社は自由に解雇できる”というものではありません。経営難を理由として労働者を整理解雇する場合にも次の要件をみたさなければなりません。
a,解雇しなければならない会社の実状が本当にそのとおりなのか
b,解雇しないでほかの方法について会社は努力したのか
c,解雇の人選の公平・妥当性
d,解雇の手続きが正しいか
この4要件を満たさない解雇は無効です。
●“障害者である”というのは解雇の正当な理由に該当せず、また整理解雇の4要件をみたすものでもありません。
障害者枠としての雇用
従業員56人以上の会社は、従業員の1.8%の障害者を雇用しなければいけません。その場合の障害者は常用労働者でなければならず、短期契約の労働者を雇用しても1.8%の雇用率達成の対象とはなりません。
多くの企業は障害者を一方で“契約社員”としながらも、他方で「契約更新を前提とする」という理由により“常用労働者”にカウントし、労働省に報告しています。
●一方で“常用労働者”として届出していながら、片一方で“契約社員”だといって、勝手に契約を打ち切れるというのは、あまりにも都合のいい話です。 このような勝手な論理が認められるはずがありません。
(弁護士 清水建夫)
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